CASE STUDY51
硬くて割れやすいAS樹脂に空押し。金型彫刻レスで深く美しいレリーフとコスト削減を両立

金型を使わず、美しく立体感のあるレリーフ模様を再現した今回のプロジェクト。透明性と剛性を兼ね備えたAS樹脂を採用したことで、仕上がりの美しさとともに、硬さゆえの加工難度という壁にも直面しました。
その課題を乗り越え、空押し加工で深さと精度を両立。コストを抑えながら、金型彫刻に引けを取らない高級感を実現しています。
「空押し加工の特性が生み出す凹凸感がミソなんです」と語るのは、開発を担当した田中さん。加工が難しい硬質樹脂への挑戦から広がった、空押し加工の可能性に迫ります。
細く深いレリーフを美しく再現したい
—-お客さまからどのようなご要望がありましたか?
コンパクトの蓋天面に、凹凸のあるレリーフ模様を加飾したいというご相談をいただきました。とくに「細い線まで深く、美しく浮き立たせたい」という強いご要望がありました。
凹凸のある加飾には、主に3つの方法があります。それぞれの特徴と課題は以下の通りです。
金型彫刻 | 金型に直接レリーフ模様を彫刻し、射出成形時に模様ごと一体で成形する方法。非常にシャープで緻密な仕上がりが可能ですが、金型の製作費や変更費が高く、コストがかさみます。 |
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ホットスタンプ | 金属製の刻印で熱と圧力を加え、金属箔や顔料箔を容器に転写する方法。多少の凹凸は表現できますが、深いレリーフや複雑な形状には不向きです。 |
空押し加工 | 加熱した金属製の刻印で容器表面に直接圧力をかけ、凹凸を形成する方法。高級感ある仕上がりが期待でき、金型を使わないためコストも抑えられます。ただし、素材や厚みによって加工の深さに制限があり、熱と圧力による変形リスクがあるため、高い精度と技術が求められます。 |

レリーフ模様を施した金属製の刻印
こうした選択肢の中から、今回はコストと仕上がりのバランスを重視し、「空押し加工」での再現を提案。以前、マスカラ容器での実績もあったことから、当社としても技術的に対応可能と判断し、プロジェクトがスタートしました。
高級感とコスト削減を両立
—-どのような成果がありましたか?
最大の成果は、コストダウンです。金型にレリーフを彫刻する場合に比べ、約1/3のコストで同等の仕上がりを実現。仕上がりを見たお客さまからは「金型を使っていないとは思えない」と驚かれるほどです。
また、仕上がりの立体感と美しさもポイントです。加熱した金属板で加圧することで、溶けた部分が凹に、溢れた樹脂が凸になり、陰影のある豊かな表現が可能になります。繊細な調整と加工ノウハウがあれば、金型に頼らなくても十分な表現力を確保できます。
硬質なAS樹脂に挑んだ精密な条件出し
—-苦労したのはどんなところですか?また、どのようにして乗り越えましたか?
今回使用したAS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)は、透明性や耐薬品性に優れる一方で、表面が硬く、割れやすいという特徴があります。PPなど柔らかい樹脂に比べ、空押し加工では扱いが難しく、圧力が強すぎるとヒビが入ったり、温度が高すぎると糸引きや曇りが出たりする恐れがありました。
とくに、深さと立体感を出すためには圧力や温度を上げる必要がありますが、条件を上げすぎると素材を損なうリスクも。「温度・圧力・時間」の三要素を細かく調整し、最適なバランスを見つけ出すまでには相応の時間と労力がかかりました。
こうした技術はAS樹脂だけでなく、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)のような硬質素材への空押し加工にも応用が可能です。
金型に頼らず自由な加飾提案を実現
—-プラシーズならではの空押し加工の強みは?
空押し加工は金型を使わずに立体感を表現できるため、限定品やサンプルなど、金型を起こしにくい案件に最適です。刻印ひとつで通常スタンプとの併用もでき、コスト効率の良さと汎用性を兼ね備えています。
「デザインにこだわりたいけれど、コストがネックで新型をつくれない」といったお客さまにも、ぜひご活用いただきたい技術です。
空押しを軸に加飾表現の可能性を拡張
—-今後の展開について聞かせてください。
今回の技術を、これまで空押し加工を採用してこなかった製品にも展開していきたいと考えています。
樹脂の厚みや色、加飾の有無、配置位置の工夫によって、デザインの幅は広がります。さらに、蒸着・塗装・ホットスタンプなど他の加飾技術と組み合わせることで、空押しならではの立体感を生かした、多彩な表現が可能になるはずです。
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