CASE STUDY55
【パルプモールド×水転写】が拓く新しい加飾表現。紙が、木にも、石にも

従来の印刷では難しかった、パルプモールドへの全面加飾。 それを可能にしたのが、「水転写」という新しい挑戦でした。
水に弱い紙に、あえて「水転写」。
素材の弱点を超えるために、撥水処理や手作業の繊細な技術を重ね、紙とは思えない質感表現を実現しました。
「技術と発想の掛け合わせで、素材の表情はここまで変わるんです」と話す紙器部門の阿部さん。今回は、そのプロセスと広がる可能性について話を聞きました。
「紙ではできない」を超えるために
—-今回のプロジェクトは、どのような経緯ではじまったのでしょうか?
従来、パルプモールドは印刷範囲や表現の制約が大きく、「全面に模様をつけたい」というデザインニーズを十分に満たすことができませんでした。
というのも、パルプモールドは印刷ともっとも相性の悪い素材なんです。凹凸の大きい立体形状、紙特有の吸水性、そしてインクの乗りムラ。通常の印刷方式では、全面加飾はほぼ不可能とされてきました。


パルプモールドへ部分印刷を施した製品事例。水転写だけでなく、用途に合わせて最適な加飾方法を提案できる。
そこで着目したのが、もともとプラスチック加飾で培ってきた「水転写」という技術です。
紙にとっては本来、禁じ手とされる「水転写」ですが、複数の素材を扱ってきた経験があるプラシーズだからこそ、「紙に水転写を施したらどうなるだろう?」という発想につながりました。
水に弱い紙に「水転写」。最大の壁は素材の特性
—-技術的には、どのような部分が難しかったのでしょうか?
一番のハードルは、「紙が水に弱い」という根本的な特性でした。水転写は通常、水槽に沈めて行う方法なので、そのままではパルプモールドがふやけて形が崩れてしまいます。
そこで、まず表面に撥水加工を施し、さらに、沈めずに表面だけをすくうように転写するという手作業を組み合わせることで、水に触れる時間を極力短くしました。この作業は、水がカット面に入り込む前に一気に巻き上げる必要があり、スピードと手の感覚がものをいう繊細な工程です。

迷彩柄の水溶性フィルムを水槽に浮かべ、水圧で柄を均一に転写させる「水転写」加工。
こうした積み重ねがあって、紙でありながら全面加飾という表現が実現しました。
木目柄で見せた、紙とは思えない質感
—-試作段階では、どのような検証を行いましたか?

最初にテストしたのは、木目柄です。ランダムなパターンと水転写の特性がうまく噛み合い、光の当たり方によって見え方が変わる豊かな表情が生まれました。
クライアントからは、「紙でここまでできるとは思わなかった」と高く評価され、全面加飾の実現性をしっかり確認できたのも大きな収穫です。
また、同様の製品は市場にもほぼ存在せず、環境配慮と質感表現を両立した、新しい価値提案となりました。
どんな柄が向いていて、どんな柄が難しいのか
—-水転写ならではの“得意分野”と“苦手分野”はありますか?
規則性のあるロゴや直線的な図柄は、わずかな歪みが仕上がりに目立つため、相性があまりよくありません。
一方で、木目やマーブル、石目、小花模様、ゼブラ柄や虎柄などのランダムパターンとは、非常に好相性です。こうした柄は、水の動きによる自然な揺らぎがむしろ深みを生み、紙では再現しにくいニュアンスを表現できます。
水転写の特性を生かすことで、素材の持つ限界を越えた質感づくりができるのです。
高級ギフトや限定デザインの特別な箱へ
—-加工コストについてはどう考えられていますか?

水転写は1個あたり200〜300円と、量産用途としては高めのコストになります。しかし、木箱ほどのコストをかけずに特別感を出したい場面では、大きな強みになります。
たとえば、高級チョコレートのギフトBOXや高価格帯スイーツの限定パッケージ、ブランド小物の小ロット商品、エシカル視点での木箱代替など、少量生産でも質感とストーリー性を求められるアイテムに最適です。
小ロット向けの高付加価値パッケージとして、紙の領域に新しい選択肢を広げる技術と言えます。
素材の壁を越えたとき、新しい表現は生まれる
—-今回の取り組みを通じて見えたことは?
水に弱いパルプモールドに、あえて水転写を施す。その「素材の弱点に立ち向かう」アプローチこそが、今回の技術的ブレイクスルーにつながりました。
素材を超えた発想が、新しい表現をつくる——今回のプロジェクトは、そのことを改めて実感した取り組みでした。
今後もプラシーズでは、技術とデザインの掛け合わせで、素材の可能性を広げていきます。
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