【プロが解説】加飾とは?塗装の基礎知識からよくある失敗まで徹底解説!
加飾の中でも良く用いられる「塗装」は、物体の表面を塗料の被膜で覆う表面処理の一つです。
日用雑貨、家具、建物、自動車、電化製品といったよく目にする物から、工業設備や公共設備など、多種多様なものが加飾されています。
このような加飾技術は、製品の外見を美しくするだけでなく、様々な機能を持ちます。
今回の記事では、そんな加飾塗装についての基礎知識から実際の加飾方法までをお話したいと思います。
加飾塗装の役割
加飾をする際の塗装には、大きく分けて3つの役割があります。
1.物を保護する
塗料は乾燥すると、物の表面に薄い膜を作ります。
その膜が屋外の雨風や紫外線、などの環境条件から物を保護し、薬品による浸食、劣化を防止することで物を長持ちさせます。
2.物を美しく加飾する
塗料は、物に色や艶、滑らかさ、模様や立体感などを与えるとともに、美しく保ち、快適な生活空間を作ります。
また、成形品表面の微小なキズや荒れ、仕上がりのムラなど、美観、質感を損ねる要素を隠します。
さらに、塗料が均一に塗布されることで見栄えや高級感が飛躍的に向上します。
3.物に特別な機能・効用を与える
塗料の中には、防汚、防カビ、防水など他にも様々な特別な機能を与えるものがあります。
例えば耐火塗料なら火災時の安全性向上、防音塗料なら騒音の軽減など、特別な機能は人々の安全で快適な暮らしや環境改善などのいい影響を与えることに貢献しています。
塗装以外の加飾方法
加飾する方法は塗装以外にも様々な方法があります。
表現したい内容や、コストに合わせた加飾方法を選択することが重要になってきます。
印刷
印刷とはインキにより、文字や絵などを表現することを指します。
プラスチック容器への印刷方法は。シルクスクリーン印刷とパッド印刷の2種類がよく使われています。
シルクスクリーン印刷はメッシュ状の版を作成し、その版にインクを乗せ、ゴムベラで版の反対側にインクを押し出すようにして製品へ印刷する方法です。
パッド印刷は、版上のインクを弾力のあるシリコン製のパッドに転写し、それを製品に押しつけることで二次転写を行うオフセット印刷の一種です。
印刷の加飾方法についてはこちらの記事でも紹介していますので、是非ご覧ください。
容器を美しく加飾!プラシーズの取り組み ~印刷編~ – 株式会社プラシーズ (pluseeds.co.jp)
箔押し(スタンプ)
箔押しとは、金属を薄いシート状にした箔を刻印で容器に押し付け、熱と圧力をかけることで容器に貼り付ける加飾方法の事です。
金属をそのまま容器に貼り付けているイメージに近いため、印刷では難しい金属特有のメタリックな光沢感を表現することができます。
箔押しの技術についてはこちらの記事で紹介しております。
箔押しで化粧品容器に輝きを!~金属光沢からホログラムの表現まで~ – 株式会社プラシーズ (pluseeds.co.jp)
蒸着
蒸着とは金属や酸化物などを蒸発させて、素材の表面に付着させる表面処理のこと。もしくは薄膜を形成する方法のことをいいます。
蒸着には物理蒸着と化学蒸着の2種類があり、物理蒸着は物理反応を利用する蒸着方法の一つで、化学蒸着は化学反応を利用して行う蒸着方法の一つです。
プラスチック容器に加飾する際は、密着を良くするために前処理が必要になります。
表面処理と薄膜形成、前処理が必要な点は塗装と似ていますね。
シュリンク
シュリンクとは、熱を加えると縮むフィルムの性質を利用した加飾方法で、絵柄が印刷されたフィルムを容器の形に沿って収縮させることが出来ます。
シュリンク加飾の特徴としては、印刷や転写ができない部分にまでデザインを施すことが可能なので、商品のPRがしやすいこと。また、透明感と光沢性に優れているため、写真やグラデーションをきれいに表現できます。
さらに、製品劣化や色褪せ、傷や汚れなどから守ってくれます。
プラシーズでのシュリンク加飾の取り組みは、以下のURLから知ることが出来ますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。
くびれの大きい異形ボトルへのシュリンク加飾。歪み補正や位置決めを高精度化し、真円を真円に仕上げる難題を見事クリア – 株式会社プラシーズ (pluseeds.co.jp)
加飾塗装に使われる塗料
ここからは、加飾塗装について深堀りしていきます。
まず、一般的に加飾塗装で利用される「塗料」の中身について解説します。
塗料の成分と塗膜の形成
一般に塗料は液状で、「顔料」「樹脂」「添加剤」「溶媒」の4つの成分で構成されており、その組成は膜になって残るものと揮発/蒸発して膜にならないものに分けることが出来ます。
塗装をすると、塗料内の水や有機溶剤といった溶媒や、一部の添加材が揮発/蒸発し乾燥していくため、塗装した部分には顔料・樹脂・添加剤が残ります。これらの成分によって塗膜が形成され表面を美しく加飾します。
1.顔料
顔料の大きな役割は塗料の色彩を作ることで、下地を隠す作用があります。また、顔料の中には塗料を増量したり、さびの発生を防いだりするものもあります。
こうした役割の違いによって、顔料は以下のの4種類に分けられます。
着色顔料・・・塗料の色を決める
体質顔料・・・塗料を増量する、塗料の艶を消す
さび止め顔料・・・さびを防ぐ
骨材・・・塗料を増量する
2.樹脂
樹脂の役割は、塗料の骨格を作ることで、物に付着して膜になる役割があります。
樹脂にはアクリル樹脂、シリコン樹脂などさまざまな種類があり、特に、樹脂の種類によって塗装したものが長持ちする度合い(耐候性)が違うことが大きな特徴です。
3.添加剤
添加剤の役割は、塗料の性能を補助的に向上させることです。添加剤には沈殿防止剤、たれ防止剤などさまざまな種類があります。
4.溶媒
溶媒の役割は、樹脂を溶かしたり薄めたりする液体のことで、塗料の粘度を調整して塗りやすくする働きをします。
溶媒は大きく溶剤と水に分かれ、このうち溶剤は炭化水素系、アルコール系などの種類に分かれます。
水を使用したものは水性塗料、溶剤を使用したものは油性塗料と呼ばれます。
油性塗料と水性塗料の違い
油性塗料とはシンナーを溶剤とした塗料で、シンナーで希釈することによって塗装をしやすくしています。
油性塗料の特長
そんな油性塗料は、水性塗料に比べて以下のような特徴があります。
メリット
・耐久性が高く、雨風にさらされる外壁の塗装に適する。
(最近では水性塗料でも耐久性の高い商品が開発されています)
・下塗りをせずに塗装をできることが多く、金属にも密着する。
・乾燥速度が早い。
・水性塗料は寒冷地などの環境下では使用できない条件もあるが、油性塗料は心配がない。
デメリット
・シンナーで希釈されているため、特有の刺激臭がする
・一般的な水性塗料よりはやや値段は高くなる
水性塗料の特長
一方で、水性塗料は溶媒に水を使用した塗料の事を言います。
油性塗料と比べた時の水性塗料の特徴は以下の通りです。
メリット
・安全性が高く、低刺激で扱いやすい
・室内に塗装しても臭いが気にならない
・油性塗料に比べて安価
デメリット
・耐久性に劣る
・塗装できる素材の多さや速乾性に劣る
・寒冷地などの環境下では使用できないといった条件がある。
加飾塗装
ご自身でいざ実際に塗装をやってみると、思うように塗れない事がよくあります。すぐに加飾が取れて、ぽろぽろと剥がれてしまったり。
そんな失敗の原因は、準備不足が大半です。
ここからは、加飾塗装の準備から、実際に塗装を行うまでの手順を紹介します。
加飾塗装をする手順
プラスチックに限らず、塗装を行うには下準備が必要です。
今回は一般的な加飾塗装の手順を例に挙げて、説明をしていきます。
1.下地を整える
製品の表面には静電気があり、ホコリやゴミを引き寄せてしまいます。
そのため、静電気を取り除く「除電」、表面のホコリやゴミを取り除く「除塵」を行います。
その後、材質によっては「フレーム処理」を行います。フレーム処理とは製品に炎を当てることで製品表面を活性化させ、塗料の食いつきを良くさせる処理です。
ご家庭で塗装をする際には、材料の表面にしっかりとヤスリがけをすることで表面に細かな溝ができ、塗料の吸着率を上げることが出来ます。ヤスリがけ後は表面についた削り粉やゴミをしっかりと取り除いてください。
材料の表面が凸凹していると塗装した時にブツのようになってしまうので、塗装面を均一にする目的もあります。
ここを疎かにすると、後々加飾が剥がれてしまったり、欠陥が起きる原因にも繋がったりするので確実に行います。
大変な作業ですが、加飾塗装の肝となるところです。
2.下地材をつける
下地作りが終わったらプライマーという下地材で下塗りをしていきます。
プライマーとは塗料の接着性を高めるためのものです。
下地材をムラなく塗ることが出来たら乾燥させます。
実際の量産では、乾燥時間の短縮の為、IR(遠赤外線)の機械に通して、溶剤をしっかりと飛ばし乾燥させます。
ここで下地材をしっかりと塗ることで色ムラを抑えたり、層間剝離を防いだりすることが出来ます。
3.塗装をする
※塗装をする際は、十分に換気のいいところで行いましょう。
量産では大量の製品に塗装しなければいけないので、全体にムラなく塗るために角度や塗料の量等を調整して、塗装します。
塗装後はIR(遠赤外線)にて乾燥後、UV照射して硬化させます。
よくホームセンターなどに売られているスプレー缶を例に説明します。
最初は材料の角や、細かいところ等の塗装しづらい部分から塗っていきます。
一度に全体にムラなく塗ろうとすると塗料が垂れてきてしまい、最悪の場合1からやり直しとなってしまいますので、最初は荒く、全体に軽く吹き付けます。
その後乾燥時間をおいて、2度目、3度目の塗装を行います。
全体がきれいでムラなく塗装出来れば完了です。
主な加飾塗装の方法
1.ハケ塗り
ハケ塗りは古くから行われてきた塗装方法であり、さまざまな形状の被塗物を加飾できます。
2.ローラブラシ塗り
ローラブラシは、塗料を無駄なく、住宅の壁など広い面積を加飾することができるので、建築塗装業界では最も使われる塗装方法です。
3.浸漬塗り
浸漬塗りは、大きく2つに分けられます。1つ目はディッピング方式といい、塗料が入った容器に被塗物をどっぷり浸けて、引き上げて乾燥させます。2つ目は、塗料を押し込んで加飾をするしごき塗りです。
4.液膜転写法
液膜転写法は、ロールコーターまたはカーテンフローコーターという機械により、一定の厚さの塗膜を作り、転写して加飾する方法です。
5.噴霧法
塗料を霧化して加飾塗装する手法です。エアスプレー方式、エアレススプレー方式、静電スプレー方式の3つに大別されます。
塗膜形成時に起こる代表的な欠陥
加飾塗装した際に起こる代表的な欠陥は、原因を知ることで対策が可能です。
ここでは、よく発生する欠陥と、よく言われている原因をご紹介していきます。
1.白化
乾燥過程で塗膜表面が白くぼけて艶がない状態。
原因:塗膜の硬化途中で塗膜表面に水分が付着したことで、表面が凸凹になるため艶が無くなる
対策:塗装する面はしっかりと乾燥させておく
2.剥離
塗膜が剥がれる現象。素材面や層間で発生する。
原因:異物、不純物が塗装する面に付着していたり、塗膜の硬化不良によって起きる
対策:塗装する面を綺麗にしておく 乾燥をしっかり行う
3.ピンホール
塗膜の硬化、乾燥時に、泡状の小さな膨れや穴が生じた状態。
原因:塗装する面にゴミ、シリコン、油、水等が付いている場合、塗料と異物との表面張力の差によって濡れにくくなる
対策:塗装する面は綺麗にしておく
4.ワレ
塗膜に割れ目が出来ること。
原因:塗膜が厚すぎると、内部の乾燥による凝集力(原子・分子・イオンの間に働いている引力)が強まり、他部分と歪みが生じることで発生する
対策:適切な量で塗装する。
5.シミ
塗膜面に小さな斑点や色ムラが生じた状態。
原因:被塗装面に水分が残っており、部分的に水分と塗料の成分が反応し起こる。
対策:塗装する面に水分が残っている場合は拭き取り、しっかり乾燥させる
6.たれ
塗料が下に流れている状態。
原因:塗料の塗りすぎや、塗料の粘度不足により発生する
対策:適切な量で塗装する、塗料の粘度を調整する
7.色ムラ
塗膜の色が不均一な状態。
原因:塗料の混ざりが悪い事や塗膜厚が均一ではないことで発生する
対策:塗装する際に、部分部分で吹き付けるのではなく、全体に満遍なく均一に塗装する
8.ブツ
仕上げ面に異物が付着して突起状になっている状態。
原因:被塗装面や塗料の中に異物がある場合に発生する
対策:塗装する面は綺麗にしておく、塗料の中に異物が入らないように注意する
吹き付けた際に空気中の埃やゴミを巻き込む可能性があるので、塗装を行う際は掃除をしてから行う
9.ハジケ
塗膜が部分的に凹みを生じた状態。
原因:下地面と塗料との間の表面張力の不均等などによって起こる
対策:塗装する面を綺麗にしておく
おわりに
加飾塗装についての説明は以上となります。
ただ塗装をするだけでも準備や下処理などが大変ですよね。
しかし、その頑張りの分だけ綺麗で納得のいく加飾に仕上がります。
個人的な話ですが、私の愛車であるバイクの塗装にチャレンジしたときに、準備や下処理をしっかりと行わず塗装をしてしまいました。
その結果、加飾は取れてブツだらけ。あんなにかっこよかった愛車を見るも無残な姿に変えてしまいました・・・
「あの時、しっかりと下地処理をしておけば・・・」なんてことにならないように、皆さんは塗装の際にはしっかりと下準備は行いましょう。
プラシーズでは化粧品容器の製造を行っており、グラデーション塗装・マット塗装・パール塗装など、様々な加飾塗装を自社で行うことが出来ます。
下の画像はグラデーション塗装の一例です。
創業90年の知識と確かな技術で「綺麗で納得のいく製品」を日々製造しております。
塗装以外にも様々な加飾を行っていますので、もし興味がございましたら、下記のリンクを覗いてみてください。
加飾技術 – 株式会社プラシーズ (pluseeds.co.jp)
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