表面加工で紙器&印刷をコーティング ~幻のワニス~
いかがお過ごしでしょうか。プラシーズ開発部のOです。
皆さまは紙器の表面に注目したことはありますか?印刷によって色々な見え方がありますが、紙は素地だと光の反射が殆ど無く、地味に見えます。ですが、紙器の表面は光を反射してツヤツヤしたものだったり、光の反射は控えめだけどマット感があって落ち着いたものになっていると思います。それは何故かというと、とある表面加工がされているからです。
今回は紙器の印刷に関係する表面加工について深く紹介したいと思います。
表面加工の前にオフセット印刷について
紙器に印刷を施すとなった時に、真っ先に出てくるのはオフセット印刷です。オフセット印刷は色の再現性が高く、色の濃淡を追及できるので、見栄えが重要な紙器にはうってつけです。
オフセット印刷は、版を使用して印刷を行う手法で、版胴に付けたオフセットインキ(平板インキ)をブランケット胴に転写して、ブランケット胴から紙面に転写する仕組みです。
ちなみにですが、オフセット印刷と呼ぶ由来は、版のインキをブランケット胴に転写することを”オフ”、用紙にインキを転写することを”セット”という2つの動きから来ているそうです。
オフセット印刷を行うには版が必要なので小ロットでの印刷には向いていませんが、大量印刷ができるとコストが抑えられます。加えて、印刷ニジミが起こりにくく、印刷速度が速いことから生産性を高い水準に上げられます。
ただ、印刷が綺麗にできても、インクを乾燥させる時間が必要です。インクが乾く前にに振動や強い力がかかると裏移りなどによる汚れの原因になってしまいます。
また、インクの乾燥が終わっても、印刷した面が露出しているので色落ち等の懸念から使用するのは難しくなります。そこで、表面加工が必要になってきます。
表面加工とは
表面加工は紙の印刷面にニスやフィルム、特殊インクなどでコーティングすることで、製品の保護やデザインの幅を広げることを言います。表面加工には多くの手法があり、大別すると、表面をコーティングすること、質感自体を変えることの2つになります。それぞれの特徴と加工方法は以下の通りになります。
表面をコーティングする加工
紙器を保護することで見栄えや強度を上げる加工。耐水性などの機能や光沢について多くの加工方法が選択できます。
代表例:OPニスやPETフィルム、プレスコートなど
表面の質感を変える加工
表面に凸凹やシワを付けたり、植毛することで視覚や触覚を通じて、立体感及び様々な質感を表現する加工。
代表例:疑似エンボスやフロッキー、デボスなど
紙器に印刷以外で付加価値を持たせるには、多種多様な表面加工があることが理解いただけたと思います。
今回、紙器の印刷面をコーティングする加工がポイントとなるので、この記事ではコーティング加工を表面加工と呼称します。
次の見出しからは、紙器の表面加工でもメジャーなOPニスとPETフィルムについて触れていきます。
OPニスで表面加工
OPニスとは、オーバープリントニスの略称で、印刷表面の上からニスを塗ることをOPニス加工と言います。
このニスにはグロスニスとマットニスの2種類があり、分かる方には名称でどんな仕上がりになるか推測可能かもしれません。
グロスニスは、紙器に光沢を付与することができ、艶やかに見える仕上がりになります。
マットニスは、グロスニスより光沢が控えめになっており、落ち着いた色合いで気品のある紙器が出来上がります。
OPニスでコーティングすると、色移りや剥がれを一定の範囲なら防ぐ効果があります。保護された紙器表面は紙の質感を残しつつ、控えめな光沢を帯びています。また、印刷を行って、すぐに表面加工に移行できるウェット式という加工方法を取ることもできます。
ウェット式とドライ式の特徴は以下の通りです。
ウェット式
こちらはインクが乾いていない印刷面にニスを引く方法です。具体的には印刷色が4色の場合、5色以上の印刷機を使用して、余っている5番目のインキ入れにニスを入れて引くことで、印刷直後に表面加工できる加工方法になります。
ドライ式
こちらはインクが完全に乾燥した状態でニス引きを行う方法です。印刷機の色が4色以下の場合はニスを入れる場所がないのでドライ式しか選べません。
インクが乾燥し終わった後にニスを引きます。インクが乾燥しないと加工できないのでウェット式より生産性は落ちてしまいます。
欠点となるのが、保護膜の厚みが薄いので、強度と光沢に関しては後述するPETフィルム貼りと比べるとあまり強くない傾向になります。
反面、保護膜が薄いので、紙との密着性が高く、背折れを防止できる強みがあります。背折れは紙を折り曲げた時に印刷面が剥がれることでひび割れのような跡ができる現象です。これは折り目の表面の繊維が耐えられる限界以上に伸びて裂けることが原因です。
PETフィルムで表面加工
PETフィルムで表面加工をするには、印刷面に接着剤を塗布し、上からPETフィルムを圧着、貼り合わせることで完成します。
この方法の優れたところは、フィルムの種類と厚みを変えることで様々な保護機能を追加、向上させることが可能です。
OPニスと比較すると、より強度が優れていて、光沢も強く発色が鮮やかです。
また、PETフィルムの特筆する点は接着性が良いことです。
欠点は、強度が強いがゆえに背折れが発生しやすく、紙の色が出てきて目立つようになります。生産コストも高くなりやすく、印刷と同時に表面加工できないこととPETフィルムの原料費も高めになっていることが影響しています。
幻の表面加工、ワニス
PETフィルムのような厚みのある光沢を出しつつ、OPニスと同様に背折れを気にしなくていい表面加工とは・・・ワニスです。
この表面加工は印刷面の上にニスを引くことで完成します。OPニスと違うのは機械を使用していないことです。上記画像の製品は昭和の時代に作られたもので、当時はハケを使った手作業で行われていました。
手作業でニスを引くにはムラや気泡など不良を避けることが必須で、なおかつ光沢が出るまで何度も重ねて引かないといけないため、職人技の結晶によって仕上げられています。
今回幻のワニスと書かせて頂いた理由は、ニスを重ねて引く技術が再現できず、殆ど継承されていないので、現代では失われた表面加工と言われているからです。
プラシーズの紙器にも表面加工
プラシーズでは、紙器にOPニスとPETフィルムを含めて、多くの表面加工を行ってきた実績があります。これらは紙製コンパクトを始め、ギフトボックスなどの貼箱といった様々な形状で表面加工をして、仕上げています。
この記事では実績品の写真を掲載できませんが、プラシーズのショールームに展示されているので気になる方はこちらのリンクからご確認ください。
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最後に
プラシーズでは、お客様の提案、用途に合わせた満足度の高い紙器作りに取り組んでおります。形状、デザインだけではなく、表面加工を含めてオリジナルの紙器が作りたい等のご要望がございましたら「お問い合わせフォーム」または「お電話」よりご連絡ください。
プラシーズのホームページでは、紙器の他にも、プラスチックの容器などについて多くの情報を発信しております。ぜひチェックしてみてください。
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