CASE STUDY25

【SDGs対応】パールの輝きが違う自慢の塗装技術。スリーウエットオン方式で焼き付け工程を減らしCO2排出量を削減

【SDGs対応】パールの輝きが違う自慢の塗装技術。スリーウエットオン方式で焼き付け工程を減らしCO2排出量を削減

3コート塗装を要するパール塗装は、塗装の中でも難易度が高く、高度な技術が求められます。理想のパール感を出すには「季節によって異なる温度や湿度の調整、回転スピードのコントロールが不可欠です」と技術担当者は語ります。

今回のプロジェクトは生産工程を見直すことで、仕上がりのクオリティアップはもちろん、無駄な工程や塗料の使用量を減らし、コストや時間、CO2排出量削減にも成功。開発の経緯やプラシーズならではのこだわり、苦労したことについて話を聞きました。

~ココに注目!~
◉車のボディ塗装で用いられるスリーウエットオン方式を自社で開発
◉焼き付け乾燥工程を減らしてCO2排出量を削減
◉理想のパール感を出すための条件設定を最適化する熟練の技

—-お客さまからどのような依頼がありましたか?

ワンタッチリップ

2017年に発売されたメナードさまのワンタッチタイプのリップスティックです。1995年の発売以来ずっと当社が容器製造を担当している製品です。

デザイナーさんからは「パール塗装で高級感を出したい」といった要望がありました。

パール塗装とは成形容器にパール塗料を拭きつけて塗布する塗装技術で、単色に比べて立体感や輝きが出るので、よりリッチな化粧品容器に仕上がります。

デザイナーが要望するパール感を出すには、どんな塗料をどのように配合して、どんな技術で実現すればいいか…。着色モデルを工場に持ち込んで検討を重ねました。

—-理想のパール感を出すにあたって、どのような課題がありましたか?

パール塗装は、アンダー、中塗り、トップの3工程で塗装します。当社では通常、この3工程を2ブースの塗装ラインで行います。

まずは1ブース目で、アンダーと中塗りを塗装し、熱乾燥炉で予備乾燥を行います。次に2ブース目で、トップを塗装し、乾燥およびUV照射をして完成となります。

当時は2ブース目の工程を外注委託していたんです。コスト削減や短納期を実現するためには、社内で一貫生産することが不可避。3工程を1ブースで行うことができないか、生産工程から見直す必要がありました。

—-課題についてどのように解決しましたか?苦労したことは?

アンダー、中塗り、トップの3工程を、それぞれ乾燥させずにウエットな状態で塗り重ね、1回の焼き付け乾燥で仕上げる塗装方式を編み出しました。スリーウエットオン塗装といって、車のボディ焼付塗装で採用されている技術です。

着手から納得のいくクオリティに仕上げるまで、半年以上を費やしましたね。

具体的な方法としては、製品投入後すぐにアンダー塗装を行い、続けて中塗り材にパールを混入し続けて塗装、少しのインターバル後にトップを塗装します。

そのときアンダーはできるだけ薄く、中塗りは塗膜が均一になるように治具回転をコントロールしました。また、アンダーと中塗りは熱乾燥塗料なので、ブース内の温度と湿度を通常よりも若干高めにセット。トップはUV硬化型なので、塗装後のレベリングエリアで溶剤が蒸発するように温度調整を行いました。

—-スリーウエットオン方式のメリットは何ですか?

SDGsに対応した環境にやさしいものづくりが可能になります。

1ブースで行うことで、工程数や塗料の溶剤の使用量を減らすことができ、コストや時間を削減できます。さらに、焼き付け乾燥の工程が減ることで、CO2排出量の削減にもつながります。

また、ブースが複数あると、乾燥が行き届かない場合に有機溶剤が中に残ってしまい、後から剥離してしまうケースも少なくありません。無駄なエネルギーの使用が削減され、結果としてCO2の排出も削減されます。

—-パール塗装におけるプラシーズの強みを教えてください。

当社のパール塗装は、パールが立っています。パール塗装の難しさは、チップが立つように攪拌(かくはん)しながら均一に塗らなければならないこと。ぜひ、パールの発色の違いを見てほしいですね。

パール塗装

パール塗装は、塗膜要素の中に雲母や貝殻などのチップ状の反射物を混入させます。それらをパールのように発色させるには、塗装皮膜の中でチップが起き上がっていなければならない。チップが寝てしまうとキレイに発色しないんです。

そのためには、季節で微妙に異なる温度や湿度の調整、容器を回転させるスピードなど、パールが立つ最適な条件設定を出す必要があります。しかも、それを1ブースで行うのは極めて高度な技術が求められます。

パール塗装はかれこれ25年以上もやっていますので、仕上がりのクオリティはどこにも負けない自信がありますね。

—-今後の課題や展開についてお聞かせください。

塗装バリエーション

スリーウエットオン塗装は3工程を1ブースで行うため、条件設定の幅が極めて狭いんです。ベストな条件を出すのに温度や湿度も影響するので、その都度シビアな調整が必要になります。再現性を持たせるのが課題ですね。

ただ、この塗装技術はいろんな可能性を秘めていると思っています。例えば、アンダーにパール材を入れ、中塗りトップで奥深いパール感の塗装にしたり、トップにパールを入れて浮いたイメージの質感を表現することもできます。

今後は塗料メーカーとコラボして、新感覚のパール塗装をお客さまにアピールしていきたいです。

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