バイオマスの”パワー”で紙をつくる!-製紙工場のバイオマス活用術-

バイオマスの”パワー”で紙をつくる!-製紙工場のバイオマス活用術-

近年、環境対応が叫ばれるなか、私たちができること…
モノのリユース、リデュース、リサイクルなどありますが、その一つとして紙製品のリサイクルがありますよね。(こちらについては過去ブログでもご紹介しています。)
今回は、紙リサイクルのような「再利用するエコ」ではなく、バイオマスを利用した「紙をつくる段階でできるエコ」という、少しニッチなお話をしていきたいと思います。

それを語るうえで、まず「バイオマス」の基礎知識についてお伝えしていきます。

バイオマスとは?

バイオマスとは、動物や植物などの生物資源「=バイオ」の量「=マス」を表す概念で、化学資源を除いた、再生可能な生物由来の有機性資源を意味します。
有機物は、太陽エネルギーと水、二酸化炭素から生物が光合成によって生成したもので、その三要素と生物が消滅しない限り、持続的に再生が可能な資源となっています。

バイオマスは「カーボンニュートラル」

有機物である植物を燃焼させた際に放出される二酸化炭素は、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素であるため、バイオマスは、二酸化炭素の吸収量と燃焼した際の二酸化炭素が等しく、新たに二酸化炭素を排出させません。よってバイオマスは「カーボンニュートラル」な資源といわれています。

バイオマスの種類

バイオマスには3つの種類があるので、それぞれ解説していきます。

廃棄物系バイオマス

廃棄物として発生しているバイオマス。
家畜排泄物、食品加工残渣、生ごみ、動植物性残渣、パルプ廃液、製材工場残材、
建築廃材などがあげられます。
パルプ廃液は、紙の原料であるパルプを製造する際に生じるものです。
(後述する「紙ができるまで」にてご説明しております。)

未利用バイオマス

資源として利用されずに廃棄されているバイオマス。
林地残材、稲わら、もみ殻、麦わらなどがあげられます。

資源作物

資源として利用することを考え栽培されたバイオマス。
さとうきび、てんさい、米、イモ類、トウモロコシ、なたね、大豆、落花生などがあげられます。

上記のバイオマスたちは、メタンガスや飼料・肥料、発電・熱利用、バイオマスプラスチック製品、バイオディーゼル・自動車燃料など、バイオマスエネルギーとして生まれ変わり、再利用されています。
資源作物のバイオマスに分類されるさとうきびは、そこから抽出される糖蜜をバイオエタノールに変え、エネルギーとして利用されていますが、その搾りかす(残渣)は紙の原料として用いられています。

また、廃棄物系バイオマスであるパルプ廃液は、本題のご紹介する紙をつくる段階でできるエコに深く関係しています。

紙ができるまで

ここまで、バイオマスについての基礎知識をお伝えしました。
つづいては、紙が木材からどのようにつくられているのか、ご紹介していきたいと思います。

「チップ」をつくる

紙が木材からどのような工程を経てつくられているのかをご紹介していきます。
まず、広葉樹や針葉樹の間伐材や端材を細かく砕き、「チップ」と呼ばれるものを用意します。このチップを、蒸融釜と呼ばれる高温で高圧な釜に、リグニンと呼ばれる木材の繊維を密着させている物質を溶かすための薬品と一緒に入れ込み、チップの繊維をバラバラにさせます。

「チップ」から「パルプ」へ

バラバラになったチップは、ウォッシャーの中で洗われ、繊維とそれ以外の木材物質が溶け込んだ蒸解廃液=”黒液”とにわかれます。その後、遠心分離機によってゴミが取り除かれ、漂白されたのちに「パルプ」と呼ばれる水分を多く含んだ繊維となります。これで紙の原料の完成です。

紙の完成

この紙の原料であるパルプをローラーによって引き伸ばしながら乾燥させることで、長い筒状に巻き取られ、紙が完成します。
(古紙がリサイクルされ紙になる工程は、こちらの記事をご覧ください紙とリサイクル

ようやく本題です!紙がつくられる際に生まれたバイオマスの”黒液”…
製紙工場ではこの廃液を余すことなく再利用しているのです!
こちらについてご紹介いたします。

紙製造で生まれたバイオマス”黒液”をエネルギーに!

黒液

黒液 出典:日本製紙連合会

先ほど紙ができるまでのご説明をしたなかで、”黒液”という廃液が抽出されると記述しましたが、製紙工場では、この黒液をバイオマスエネルギーとして再利用し、工場を動かすための電力に変換しているのです!

黒液のパワーで発電!

黒液は燃焼カロリーは石炭には及ばないものの、比較的燃焼カロリーが高いため、製紙工場の回収ボイラーで熱することで蒸気を生み出すことができます。この蒸気でタービンを回し、発電することを実現しています。

無駄のない”黒液パワー”の活用

黒液から生み出された蒸気は、温度が下がったのちに紙製造の乾燥工程にも用いられ、こちらも無駄なくエネルギーとして利用されています。さらに、黒液を燃焼させた後に生まれる灰から木材の繊維を解く薬品も回収でき、なんとその約98%が紙の原料であるパルプの製造工程で再利用されるといいます。黒液、なんてエコなんでしょう…

製紙工場におけるバイオマスエネルギーの利用率は高い!

バイオマスである黒液を用いたエコをご説明しましたが、製紙工場では黒液以外にも、複数のバイオマスを用いたエネルギーを利用しています。
ペーパースラッジ(PS)と呼ばれる紙を作る段階で生まれる微細な繊維分などを含む有機性の汚泥や、紙くず、木くずなどもバイオマスエネルギーとして製紙工場内で再利用されています。
バイオマスエネルギーや再生エネルギーの利用率は、2020年度では約50%となっており、化石エネルギーの依存率が低いことが伺えます。

バイオマスエネルギー以外にも、廃タイヤ、「RPF」と呼ばれる再生困難な古紙と廃プラスチックから作られた、石炭と同等のエネルギーを生み出すことのできる廃棄物燃料を用い、化石エネルギーからの脱却を推し進めているようです。

製紙業界のエコ先進国 日本

世界的に見ても、日本の製紙業界がいかにエコなのかが下図の通りお分かりいただけると思います。このグラフでは、アメリカ、カナダ、ロシアなどに比べ日本は極めて低い数値が示されていますが、これはポテンシャル値であるので、この値が低い方がエコを実践している証ということです!

製紙工場では、さまざまなバイオマスや廃棄材のエネルギーで工場内の電力を賄い、エコに貢献していることが分かりましたね。

最後に紙とバイオマスの話題に便乗し、プラシーズの実績品をご紹介しちゃいます!

プラシーズのバイオマスを用いた紙・プラスチック製品-

本記事にて製紙工場におけるバイオマスの利用についてご紹介しましたが、弊社でもバイオマスを用いた紙製品・プラスチック製品がございます。

バイオマスを利用した紙の貼函

アルビオン様の実績品

まずは紙の貼函のご紹介です。この貼函に使われているパルプモールドは、「バガス」と呼ばれる、記事の冒頭にてご説明した資源作物バイオマスであるサトウキビの残渣(搾りかす)をパルプとして用いられている紙となっております。
写真の実績品はアルビオン様のセットボックスとなっており、紙の貼函の中に入るプラ容器と併せておつくりすることが可能となっております。

バイオマスを利用したプラスチック製品

「NeCycle®」を用いたリップ容器「NeCycle®」を用いたリップ容器

弊社では、バイオマスのプラスチック樹脂を用いた成形にも取り組んでおります。こちらはNEC様の「NeCycle®」と呼ばれる、未利用バイオマスである木材の端材や稲わらから抽出されるセルロースからプラスチック樹脂をつくったもので、成形品はまるでクリア塗装を施したような上品な艶感を演出させることができます。

最後に弊社製品の宣伝をしてしまいましたが、この記事を通して、紙とバイオマスの技術にご興味を持たれたかたがいらっしゃいましたら、お問い合わせフォーム、またはお電話でのご連絡をお待ちしております。

バイオマスを用いた紙を”つくる”段階でできるエコについて、お読みになった方々の理解が深まれば幸いです。
プラシーズWebサイトでは、本記事のほかにも紙関連の話題や、弊社の技術のご紹介など様々なジャンルの記事がアップされています。
是非読んでみてください!