自然にかえる生分解性プラスチックの凄さ
皆さま、こんにちは。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
株式会社プラシーズでございます。
近年、環境問題がメディアに取り上げられることが多くなってきました。この問題を解決するためプラシーズは生分解性プラスチックの研究、開発を進めております。今回は、生分解性プラスチックについて詳しく解説し、最後に取り組みについてもご紹介します。
環境問題とは
具体的には、気候変動や大気汚染、海洋汚染などが挙げられます。二酸化炭素は気候変動や大気汚染に、プラスチックごみは海洋汚染に繋がる恐れがあります。
二酸化炭素排出量について
世界の二酸化炭素排出量を見てみましょう。
下記は2022年のデータになります。日本は世界各国と比較して5位に位置しています。
順位 | 国 | 排出量(百万トン/年) |
---|---|---|
1 | 中国 | 10,550,25 |
2 | アメリカ | 4,825,78 |
3 | インド | 2.595,85 |
4 | ロシア連邦 | 1,457.49 |
5 | 日本 | 1,065.71 |
6 | インドネシア | 691.97 |
7 | イラン | 667.39 |
8 | ドイツ | 634.88 |
9 | サウジアラビア | 612.48 |
10 | 韓国 | 592.40 |
出典:世界の二酸化炭素(CO2)排出量 国別ランキング・推移(EI) – GLOBAL NOTE
プラスチック廃棄量について
続いて世界のプラスチック廃棄量について見てみましょう。
下記は2019年のデータになります。日本は世界各国と比較して4位に位置しています。
順位 | 国 | 廃棄量(万トン/年) |
---|---|---|
1 | 中国 | 2,536 |
2 | アメリカ | 1,719 |
3 | インド | 558 |
4 | 日本 | 471 |
5 | イギリス | 289 |
6 | ブラジル | 281 |
7 | フランス | 232 |
8 | ロシア | 230 |
9 | インドネシア | 226 |
10 | 韓国 | 225 |
出典:「使い捨てプラスチック」の世界ランキング公表 | 一般社団法人日本エシカル推進協議会(JEI) (jeijc.org)
このように、日本は二酸化炭素の排出量やプラスチック廃棄量が上位に位置していますので、わたしたちプラシーズも、環境問題に真剣に向き合わなければいけないと考えております。
生分解性プラスチック
では、環境に良いと言われている生分解性プラスチックとは、一体どのようなものなのでしょうか。まずは用語について解説します。
生分解とは?
生分解とは、単にプラスチックがバラバラになることではありません。バクテリア、菌類、その他の生物によって化合物が水や空気、鉱物などの無機物まで分解されることです。プラスチックが無機物まで分解されれば、環境に悪影響を与えることは基本的にありません。
生分解性プラスチックとは?
生分解性プラスチックは、基本的に従来のプラスチックと同じ性質と機能を持ちます。それに加え、土中や海中でバクテリアなどの微生物の働きによって最終的には水と二酸化炭素にまで完全に分解されるため、使用後の分解性に注目が集まっています。では、その分解性について、分かりやすく写真を使って見ていきましょう。
生分解性プラスチック製品の生分解の様子
土の中と堆肥化施設での生分解性プラスチックが生分解する様子です。どのくらいの時間がかかり、どのように変化しているでしょうか。
土壌での生分解性プラスチック製ボトル
以下の写真は、土壌で生分解プラスチック製ボトルが生分解される様子です。初期状態から分解が始まって、14日後、24日後、42日後の様子が示されています。
堆肥化施設での生分解性プラスチック製生ごみ袋
以下の写真は、生分解性プラスチック製のごみ袋が生分解される様子です。初期状態から分解が始まって、30日後、60日後、90日後の様子が示されています。
このように、プラスチックが生分解されると、プラスチックごみの処理方法の1つである焼却が不要になり、二酸化炭素削減につながります。
生分解性プラスチックの種類
生分解性プラスチックは、原材料の由来から、大きく3つに区分することができます。それぞれのメリットデメリットも併せて紹介します。
1.バイオ系プラスチック
サトウキビやキャッサバなどの植物から抽出されるデンプンなどが原料となっています。
- ポリ乳酸(PLA)
- ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)
などが該当します。
バイオ系プラスチックのメリットは、再生可能な資源を原料としているため、化石燃料の使用を抑え、二酸化炭素排出を削減できます。デメリットとしては、石油や天然ガスと比較して原料の調達が安定していない点や、従来のプラスチックと比較して、製造工程でコストが余分に掛かってしまう点などが挙げられます。
2.化学合成系プラスチック
石油や天然ガスなどの化石燃料を原料としています。
- ポリビニルアルコール(PVA)
- ポリグリコール酸(PGA)
- ポリブチレンサクシネート(PBS)
- ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)
などが該当します。
化学合成系プラスチックは原料が石油や天然ガスのため、品質が安定しており、物性が優れているため、加工性や成形性が高く、求める形状の製品をつくりやすいというメリットがあります。デメリットとしては、生分解される種類が少ないこと、原料の調達の過程で多くの温室効果ガスの排出がされる点などが挙げられます。
3.混合系プラスチック
バイオ素材系と化学合成系、両者をかけ合わせて開発されています。
- セルロース誘導体
- デンプン
などが該当します。
メリットとしては、バイオ素材系と化学合成系の混合材のため、生分解性がありながらも品質が安定している点です。バイオ系と化学合成系の弱点を補うことができています。デメリットとしては、まだまだ世の中に普及していないプラスチックのため、原料調達が困難な点や、製造工程に対応していないメーカーが多いことが挙げられます。対応するためには専門の知識や設備投資が必要となります。
生分解性プラスチックを使うメリットとデメリット
次に、生分解性プラスチックを使うメリットとデメリットを紹介します。
生分解性プラスチックを使うメリット
- 適した環境で分解されるので、ごみとして溜まることはない
- 海で分解される生分解性プラスチックであれば、海洋プラスチックごみ問題の対策につながる
- ロゴマーク付きの製品を作る場合、地球に優しい企業であることをアピールできる
生分解性プラスチックを使うデメリット
- 通常のプラスチックより値段が高価
- プラスチックの利点であった耐久性、機能性が良くない
- 使い捨てが前提となるため、リサイクルやリユースに向かない
- すぐに分解されるわけではなく、分解に時間がかかる
生分解性プラマークについて
生分解性プラスチック製品に表示される生分解性プラマークというものがあります。ここでは、生分解性プラマークの成り立ちを紹介します。
グリーンマーク
グリーンマークは、生分解性プラスチックを使用した製品に表示することができる認証マークです。5つの厳しい基準をクリアし、認定された製品にのみ、グリーンマークを表示することができます。
グリーンマークの歴史
グリーンマークは、20年以上前にグリーンプラ識別制度として始まりました。開始当時は、生分解プラスチック製品に対する認知度が低く、消費者のほとんどが知りませんでした。
そこで、日本バイオプラスチック協会が、消費者にも分かりやすいマークを表示し、生分解性プラスチック製品と一般プラスチック製品を識別するため、グリーンプラ識別表示制度を制定しました。
グリーンマークから生分解性プラマークへ
20年以上使われてきたグリーンプラマークですが、「グリーンプラ」という名称が植物由来のプラスチックを想起させ、一般消費者は生分解性プラスチックと理解しないのではないか」という指摘もありました。
これを受けた日本バイオプラスチック協会により、グリーンプラ識別表示制度は以下のように名称変更されました。
変更内容
- 制度名称:「グリーンプラ識別表示制度」→「生分解性プラ識別表示制度」
- 制度内容:「グリーンプラ」→「生分解性プラ」(生分解性プラの中でも、バイオマスプラ識別表示基準を満たす製品は「生分解性バイオマスプラ」と称します)
- マークデザイン:グリーンマーク→1)生分解性プラマーク、2)生分解性バイオマスプラマーク
出典:JBPA – 日本バイオプラスチック協会 (jbpaweb.net)
この新しい名称とロゴマークは2021年7月から使用されています。
生分解性プラスチックのまとめ
ペットボトルなどの一般プラスチックは、分解に数百年かかるといわれていますが、生分解性プラスチックは数か月と、一般プラスチックに比べて短くなっています。
生分解性プラスチックの焼却や生分解でも二酸化炭素は発生しますが、バイオ系や混合系の素材を使った製品では、原料となる植物が育つ過程で光合成により二酸化炭素が吸収されます。そのため、二酸化炭素の発生を実質0にすることができ、環境に優しいといえるのです。
一方で、リサイクルやリユースには向かず、使い捨て前提となるなど、デメリットも見られます。製品が使い捨て前提となる場合、メーカーによってはイメージダウンにつながるなど、マイナスに捉えられることが考えられます。
また、価格面、環境面ではまだまだ改善の余地があります。それでも、製品の種類、用途によって使い分ければ、リサイクルやリユースするよりも、生分解させた方が価格面や環境面など、総合的にメリットの割合を半分以上に占めることができます。また、使い捨てにマイナスなイメージを持っている消費者もいるかもしれませんが、生分解プラスチック採用の背景や目的の説明など、アプローチをしっかり行うことで、マイナスなイメージを最小限に抑えることができます。
総じて正しい使い方、情報を広めれば、この生分解プラスチックは世の環境問題に大きく貢献できるでしょう。
プラシーズの生分解性プラスチックを用いたプラスチック容器
本記事では、生分解性プラスチックについて紹介しました。当社プラシーズでも生分解性プラスチックを使った製品の試作と製品化に成功しています。
ウッドチップを使用した生分解可能な容器
こちらは、NISSHA株式会社(以下、NISSHA)の生分解可能なSulapac® (スラパック) を使用した製品です。この製品は主にサプリメント容器として売られています。Sulapac®は、ウッドチップと植物由来のバインダーを主原料とした100%バイオマス由来の材料で構成され、デザイン性の高い外観となっています。堆肥環境下では約3カ月、自然環境下では樹木と同じサイクルで生分解します。 (参考URL : https://connect.nissha.com/ecosense/molding/biocomposite/bio-sulapac/)
以下の画像は生分解する過程の様子です。
NISSHAのSulapac®には、ウッドチップ粒子の大きさが異なる2種類の材料UniversalとPremiumがあり、目的によって使い分けが可能です。
プラシーズでは、細かいウッドチップを用いたUniversalを使い、成形をしています。
この材料を使い成形した容器は、表面に光沢がなく曇りやすいという特徴がありました。そこで、プラシーズでは成形条件を工夫することで、上記問題を解消し、外観が綺麗な容器をつくることに成功しております。
さらに、容器にシルク印刷と呼ばれる方法で加飾印刷をかけることも可能です。シルク印刷には、UVライトを当てて硬化するタイプと、熱を加えて硬化するタイプの2種類があります。プラシーズではどちらのタイプも対応可能なため、それぞれ試作を重ねた結果、Sulapac®の製品にはUVライトで硬化するタイプのシルク印刷に適性があると判明しました。
※加飾印刷についてはこちらの記事もチェック!
おわりに
今回紹介致しました生分解プラスチックが、環境問題の解消に貢献できるということをご理解いただけたでしょうか?
化粧品分野では、リサイクルやリユースされる製品は数多く存在しますが、生分解性プラスチックを使った製品は、良品をつくるのが難しいため、まだ少ないのが現状です。プラシーズではこれからも開発、検討を重ねていき環境に優しい容器をつくっていきます。
生分解性プラスチックはもちろんですが、それ以外にも環境に優しい容器の取り扱いはいくつもございますので、もし興味がございましたら、お問い合わせフォームまたはお電話にて、お気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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