自然にかえる生分解性プラスチックの凄さ
プラスチックごみは、量がかさばるため廃棄物処理の負担が大きくなってしまいます。また、自然環境中に捨てられたりした場合、いつまでも残ってしまう問題があります。
この環境問題を解決するため1980年代から生分解性プラスチックの研究、開発が進められてきました。ここでは、生分解性プラスチックについて詳しく解説し、最後にプラシーズでの取り組みについても紹介します。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックとはどのようなものなのでしょうか。まずは用語について解説します。
生分解とは?
生分解とは、単にプラスチックがバラバラになることではありません。バクテリア、菌類、その他の生物によって化合物が水や空気、鉱物などの無機物まで分解されることです。
生分解性プラスチックとは?
生分解性プラスチックは、一般的に使用するときは従来のプラスチックと同じ性質と機能を持ちます。それに加え、土中や海中でバクテリアなどの微生物の働きによって最終的には水と二酸化炭素にまで完全に分解される特徴があり、使用後の分解性の機能に注目をされているプラスチックです。文章だけでは分かりにくいと思うので、写真を使ってみていきましょう。
生分解性プラスチック製品の生分解の様子
土の中と堆肥化施設での生分解性プラスチックが生分解する様子です。どのくらいの時間がかかり、どのように変化しているでしょうか。
土壌での生分解性プラスチック製ボトル
堆肥化施設での生分解性プラスチック製生ごみ袋
以下の写真は、生分解性プラスチック製のごみ袋が生分解される様子です。初期状態から分解が始まって、30日後、60日後、90日後の様子が示されています。
生分解性プラスチックの種類
生分解性プラスチックは、原材料の由来から、大きく3つに区分することができます。
1.バイオ系プラスチック
サトウキビやキャッサバなどの植物から抽出されるデンプンなどが原料となっています。
- ポリ乳酸(PLA)
- ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)
などが該当します。
2.化学合成系プラスチック
石油や天然ガスなどの化石燃料を原料としています。
- ポリビニルアルコール(PVA)
- ポリグリコール酸(PGA)
- ポリブチレンサクシネート(PBS)
- ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)
が該当します。
3.混合系プラスチック
バイオ素材系と化学合成系、それぞれの弱点を補うために、両者をかけ合わせて開発されています。
- セルロース誘導体
- デンプン
が該当します。
生分解性プラマークについて
生分解性プラスチック製品に表示される生分解性プラマークというものがあります。ここでは、生分解性プラマークが出来る流れを紹介します。
グリーンマーク
グリーンマークは、生分解性プラスチックを使用した製品に表示することができる認証マークです。5つの厳しい基準をクリアし、認定された製品にのみ、グリーンマークを表示することができます。
グリーンマークの歴史
グリーンマークは、20年以上前にグリーンプラ識別制度として始まりました。開始当時は、一般的に生分解プラスチック製品に対する認知度が低く、消費者のほとんどが知りませんでした。
そこで、日本バイオプラスチック協会が、消費者にもわかりやすいマークを表示し、生分解性プラスチック製品と一般プラスチック製品を識別するため、グリーンプラ識別表示制度を制定しました。
グリーンマークから生分解性プラマークへ
20年以上使われてきたグリーンプラマークですが、「グリーンプラ」という名称が植物由来のプラスチックを想起させ、一般消費者は生分解性プラスチックと理解しないのではないか」という指摘もありました。
これを受けた日本バイオプラスチック協会により、グリーンプラ識別表示制度は以下のように名称変更されました。
変更内容
・制度名称:「グリーンプラ識別表示制度」→「生分解性プラ識別表示制度」
・制度内容:「グリーンプラ」→「生分解性プラ」
(生分解性プラの中でも、バイオマスプラ識別表示基準を満たす製品は「生分解性バイオマスプラ」と称します)
・マークデザイン:グリーンマーク→1)生分解性プラマーク、2)生分解性バイオマスプラマーク
この新しい名称とロゴマークは2021年7月から使用されています。
バイオマスプラ(名称バイオマスプラスチック)は、トウモロコシやサトウキビなど、植物由来の原料を利用して作られています。
生分解性プラスチックを使うメリットとデメリット
次に、生分解性プラスチックを使うメリットとデメリットを紹介します。
生分解性プラスチックを使うメリット
- 適した環境で分解されるので、ごみとしてたまることはない
- 海で分解される生分解性プラスチックであれば、海洋プラスチックごみ問題の対策につながる
- ロゴマーク付きの製品をつくる場合、地球にやさしい企業であることをアピールできる
生分解性プラスチックを使うデメリット
- 通常のプラスチックより値段が高価
- プラスチックの利点であった耐久性、機能性がよくない
- 使い捨てが前提となるため、リサイクルやリユースに向かない
- すぐに分解されるわけではなく、分解に時間がかかる
生分解性プラスチックのまとめ
ペットボトルなどの一般プラスチックは分解に数百年かかるといわれていますが、生分解性プラスチックは数か月と一般プラスチックに比べて短くなっています。
生分解性プラスチックの焼却や生分解で二酸化炭素は発生しますが、バイオ系や混合系の素材を使った製品では原料となる植物が育つ過程で光合成により二酸化炭素が吸収されます。そのため、生分解性プラスチックは二酸化炭素の発生を抑えることができ、環境にやさしいといえるのです。
プラシーズの生分解性プラスチックを用いたプラスチック容器
本記事で、生分解性プラスチックについて紹介しましたが、プラシーズでも生分解性プラスチックを使った製品の試作と製品化に成功しています。
NeCycle®使用プラスチック製品
1つ目が、NEC様の「NeCycle®」を使った製品です。上記の写真がNeCycle®を使った製品です。NeCycle®は、非食用のバイオマスであるセルロースを約50%使っています。残りの50%は石油系樹脂は含まず酢酸などの安全な成分を使っています。特徴として、材料自体で大腸菌・黄色ブドウ球菌、新型コロナウイルスに対して抗菌と抗ウイルス効果を示します。
また、生分解と耐久性の両立ができており自然環境中(海中でも生分解します)でゆっくりと分解しています。
室内環境で約10年の耐久性を確保できています。さらにリサイクル性も高い材料となっています。
容器の外観は、漆黒(漆ブラック)であり、塗装なしで高い光沢を実現しています。塗装していないのに光沢がでている理由は、成形時に黒い顔料に赤や青などの顔料を混ぜ、光の屈折度合により表現しているからです。
また、以下のような色調を変化させた透明の青いボトルもNeCycle®を使った製品になります。
ウッドチップを使用した生分解可能な容器
2つ目が、NISSHA様の生分解可能なSulapac® (スラパック) を使用した製品です。この製品は主にサプリメント容器として売られています。Sulapac®は、ウッドチップと植物由来のバインダーを主原料とした100%バイオマス由来の材料で構成され、デザイン性の高い外観となっています。堆肥環境下では約3カ月、自然環境下では樹木と同じサイクルで生分解します。 (参考URL : https://connect.nissha.com/ecosense/molding/biocomposite/bio-sulapac/)。
以下の画像は生分解する過程の様子です。
NISSHA様のSulapac®は、ウッドチップ粒子の大きさが異なる2種類の材料UniversalとPremiumの提供をしています。
プラシーズでは、細かいウッドチップを用いたUniversalを使い、成形をしています。
この材料を使い、成形した容器は、表面に光沢がなく、くもりやすいという特徴がありました。そこで、プラシーズでは成形時の条件を工夫することで、安定した品質の容器をつくることに成功しております。
さらに、容器にシルク印刷と呼ばれる方法で加飾印刷をかけることも可能です。シルク印刷には、UVライトを当てて硬化するタイプと、熱を加えて硬化するタイプの2種類があります。試作を重ねた結果、Sulapac®の製品にはUVライトで硬化するタイプのシルク印刷に適性があると判明しました。
加飾印刷についてはこちらの記事もチェック!
おわりに
化粧品分野ではリサイクルやリユースされる製品は、数多く存在しますが、生分解性プラスチックを使った製品は、まだ少ないのが現状です。プラシーズではこれからも開発、検討をして環境にやさしい容器をつくっていきます。
生分解性プラスチックも扱い、環境に優しいプラシーズの容器にご興味がございましたら、お問い合わせフォームまたはお電話にて、お気軽にお問い合わせください。
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